[小林秀雄と人生を読む夕べ]

 小林秀雄と人生を読む夕べ 

 この講座は、第一部、第二部の二部構成になっています。
 前半の第一部は、「小林秀雄山脈五十五峰縦走」と題して、小林先生の作品を五十五作、講師池田雅延が選んで各回一作ずつ読んでいきます。小林先生六十年の作品系列を池田は飛騨山脈、奥羽山脈などの山並に見立てて「小林秀雄山脈」と呼んでいますが、そのなかでもひときわ高く、美しくそびえる五十五作を特に選んで「小林秀雄山脈五十五峰」と名づけ、≪私塾レコダ l'ecoda≫の熟読翫味作としました。
 そして後半の第二部は、「小林秀雄 生き方の徴(しるし)」と題して、「考えるということ」「常識とは何か」「歴史とは何か」など、誰にとっても「いかに生きるべきか」の急所に関わる言葉を順次取り上げ、これらの言葉について小林先生はどう言われているかをお話しします。
「小林秀雄山脈五十五峰」「小林秀雄 生き方の徴」とも、より詳しくは「l’ecoda講話覚書 Ⅰ 開講にあたって」でご案内します。



令和7年6月の講座ご案内

●6月19日(木)19:00~21:00
 小林秀雄と人生を読む夕べ

   第一部 小林秀雄山脈五十五峰縦走
     第二十八峰「モオツァルト」(「小林秀雄全作品」15集所収) 
               昭和二十一年(一九四六)十二月発表 四十四歳
 
 小林先生は、音楽はただ虚心に耳を澄まし、聞える音を細心の注意で捕えようと、それだけを心がけられていました。そんな先生に、モーツァルトは驚くべき美で答えてくれたと先生は言い、彼、モーツァルトは、自分自身の天才に苦しんだが、その苦しみは妻にも見せず快活に世に処した、彼の音楽は、そういう彼の人柄の正直な表現なのだと言って先生はモーツァルトの音楽を性急に言葉に置き換えることはせず、長年訓練した聴覚と無私とでいま鳴っている音を正確に捕えることに徹し、そこにモーツァルトの人間性が鳴り渡るのを聴き取って言います、――モオツァルトのかなしさは疾走する、涙は追いつけない……。


   第二部 小林秀雄 生き方の徴(しるし)
     「独創」という言葉

 今回の第一部で鑑賞する「モオツァルト」で、小林先生は、――摸倣は独創の母である。唯一人のほんとうの母親である……と言われています。「模倣」という言葉は令和五年十月の本講座で一度取り上げていますが、今回は「独創」という言葉に重きをおきながら「模倣」という言葉と「独創」という言葉を同時に玩味します。



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