●金森 いず美
令和五年(二〇二三)十月十九日
<小林秀雄と人生を読む夕べ>
「考えるヒント」
(「小林秀雄全作品」第23、24集所収)
「『模倣』という言葉」
十月の 「小林秀雄と人生を読む夕べ」では、第二部 「小林秀雄 生き方の徴」で、「模倣」という言葉が取り上げられました。池田塾頭は、ご講義の冒頭でこのように私たちに語りかけられました。「小林先生は模倣を絶対視していらっしゃいました、そして、模倣ということについて、そのつど強くおっしゃいました」。模倣というと、手本を観察し、見よう見真似で、身体を動かし取り組むこと、仕上がりと手本との隔たりを発見し、隔たりを小さくしていくこと、そのようにごく簡単に考えていました。ところが、私がこれまでに体験してきた模倣という行為は、模倣のようで模倣でなく、表面をなぞっているだけにすぎなかったのだと、今回のご講義で目を開かれる思いでした。
日常生活の小さな行為のうちにも、五感をしっかりと働かせて、直向きに模倣に徹すれば、自分の限界を知り、自分とは何者かを知るヒントがあるのだと、気付かされます。そしてその先に、「私は、私の人生をどのように生きるべきなのか」、私の進むべき道が続いているのだと、このご講義で教えられました。池田塾頭が取り上げられた小林先生の文章は、いずれも一度読んだだけで身に染み込むようなものではありません。その文章に込められている小林先生の思いを、作品を繰り返し読んで辿り、模倣のその先に、深い生き方の徴があることを、学んでいきたいと感じました。来月の「小林秀雄 生き方の徴」のご講義も楽しみにしています。
金森 いず美 <感想> 「『模倣』という言葉」
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